2007年8月25日土曜日

本多喜三郎ゼミ

このゼミではドイツ語圏の社会に関する事柄の中から各自が興味のあるテーマを選んで調査し、それを日本の場合と比較しながら考察します。その結果は各学期に1回、20分~30分の研究発表で紹介され、その際の質問や討論の内容を参考にして学期終了後にレポートにまとめられます。学期の開始後数回の授業は、研究発表の準備期間として文献講読や関連ヴィデオの視聴に当てられます。2007年度春学期のレポートのタイトルとその内容を簡単に紹介します。

1 ドイツ戦後外交史
コンラート・アデナウアーからアンゲラ・メルケルに至る戦後(西)ドイツの首相の外交政策を概観。
2 ドイツの歴史教科書問題と日本
ドイツとポーランドの共同歴史教科書作成を例に日本の歴史教科書問題を考察。
3 レーベンスボルン(Lebensborn)
ユダヤ人迫害に比べるとあまり知られていないレーベンスボルン計画についての報告。レーベンスボルン(Lebensborn)とは「生命の泉」という意味で、ヒトラーがドイツ人に求めた「金髪、碧眼、長身のアーリア人種」の人口を増やすために設立された協会および施設のことを指して言う。
4 ドイツの原子力政策
ドイツの脱原子力発電の契機とその影響についてのレポート。
5 年金問題について考える ―ドイツと日本の比較―
ドイツと日本の年金制度の概要とその問題点を考察
6 農業の可能性 ―ドイツと日本の場合―
ドイツと日本の農業の現状を紹介し、問題の解決策を探る。
7 ドイツの法曹養成
ドイツの職業法律家(裁判官、弁護士、検事)の現状とその養成制度に関する報告。
8 就職活動についての日独比較
大学生の就職活動についてドイツと日本の現状を比較。
9 家庭と仕事の両立―ドイツと日本における―
ドイツと日本の育児休業制度の成り立ちとその内容を比較。
10 母親が働ける環境
女性就労と育児の問題を、税制、社会保険制度、男女間の役割分担意識などの面からドイツと日本を比較。
11 日独のペット保護について
ドイツのペット事情を特に犬について紹介し、ペットを保護するために日本でもドイツのような法的手段が必要と説く。
12 ドイツの休日 ―日曜日・祝祭日―
ドイツでの日曜日・祝祭日と仕事の関係を、何度かにわたる閉店法の改正を通して考察。
13 ドイツワイン ―ブドウ品種と栽培地域からの考察―
ドイツワインの主要なブドウ品種の特徴と栽培地域の紹介。
14 ドイツパン
日本人にとってドイツパンはフランスパンほど馴染みがないが、ドイツもパンの種類の多い国。ここではドイツパンの特徴と代表的な種類を写真つきで紹介。
15 ドイツのお菓子
ドイツでは家庭でよくケーキを作る。このレポートではドイツ菓子の特徴と代表的な種類を紹介。(レポートを執筆した男子学生は、研究発表の際にお手製のケーキを持参した。 なお、有名なバームクーヘン ( Baumkuchen ) に関しては、ドイツ語学科のホームページに教員ブログ Kostbare Eier und Baumkuchen があります。)

YH

2007年8月15日水曜日

自転車にやさしい街づくり

私は時々自転車に乗って通勤する。最短距離で9キロくらいであろうか、ルートは数え切れない。その日の気分によっていろいろな組み合わせで走る。静かな道を走りたいときは川沿いの緑道を、賑やかな雰囲気を求めるときは商店街を通り抜ける道を選ぶ。コーヒーを飲みながら一服できる店も10以上はあろうか。日差しの強い夏には、午前中早めに家を出て、鉄道高架線の陰にそって走ってくる。
快適な道もあるのだが、いつもそうだとは言えない。自転車も車両にあたるので、本来は歩道を走ってはいけない。特に近年自転車マナーが注目されてきているので、むやみに歩道は走れない。しかし交通量の激しい道で車と併走するのは緊張する。急いでいるときには国道を通ることも多いが、大型トラックが通りすぎるときには、何となく体が引き寄せられる気がする。自転車のための専用道路の整備が遅れている。快適で安全な状況というには程遠いのが日本の現状であろう。
世界で一番自転車にやさしい国、自転車専用道路が整備されている国はオランダである。だいぶ前であるが、先進国首脳会議(サミット)が開かれた際、各国首脳が自転車に乗って会場を移動するという、いかにもオランダらしい演出があった。たしかそのときのドイツ首相はヘルムート・コールだったと思うが、あの巨漢のコールも自転車移動したのだったか。想像するだけも微笑ましい光景である。ちなみに第二次世界大戦後、ドイツ人がオランダを訪れるとオランダ人からよく言われたことに、「俺の自転車を返せ!」という言葉だったという。これは、ナチスによるオランダ占領中にドイツ人がオランダ人から自転車を奪い取っていったことによる。これもオランダの自転車大国ぶりを示すエピソードであろう。
オランダほどではないが、ドイツもヨーロッパのなかでも自転車環境が整備されている国に挙げられよう。初めてドイツに行ったとき、歩道と思ってフラフラ歩いていたところ、自転車に乗っている人から叱られた。その時、歩行者が通ってはいけない自転車専用道路というものがあるということを始めて知った。
ドイツで自転車に一番やさしい街はミュンスターという街である。地元の人たちは、「自転車の首都」といって誇りにしている。確かに街には自転車専用道路が整備されている。ただ整備されすぎているために、自転車利用にあたってのルールが複雑で、標識などにも習熟しなければならない。自転車運転講習のパンフレットがミュンスター市のHPからダウンロードできるが、自動車教習所の教科書と見間違うような中身の濃いものである。ところで、ドイツの自転車はペダルを逆に回すとブレーキがかかる。これは日本にはない。また「ママチャリ」も日本にしかない。ドイツで自転車に乗るときは、まずは自転車自体に乗れるようになった上で、交通ルーツに習熟しなければならない。自転車にやさしい社会も最初はそれなりに大変そうである。
次回は、ドイツでの自転車専用道路の整備に向けてのお話を書きます。
K. O