2008年5月19日月曜日

『テレビでドイツ語』よもやま話4



Guten Tag!

 月に1回,放送では児玉清さんがドイツの本を紹介してくれます。5月は,ダニエル・ケールマンの『世界をはかる』でした。この小説は2005年に発表されるとベストセラーとなり,しばらくトップの座に居続けました。(もっとも,ドイツ人は熱するのに時間がかかり,冷めるのもゆっくりなので,この現象は特にめずらしいことではありませんが。)実は2006年の世界ベストセラー・ランキングでは,『ダヴィンチ・コード』や『ハリー・ポッターと謎のプリンス』よりも売れて第2位だったとのこと(三修社プレスリリースより)。翻訳も世界で40ヵ国以上で出版される予定なのです。私もとても気に入った小説ですので,今回はこの本についてふれたいと思います。

 ドイツ語小説の伝統として,プロット(話の筋)で読ませる以上に,語りのワザで読者を魅了する作品が評価されてきました。『世界をはかる』も,ガウスとフンボルトの自然科学者会議での出会いが出来事といえば出来事で,後はやはり語りがすべてと言っても過言ではありません。

 ケールマンの語りは,たとえば近年話題になったゼーバルトの『アウステルリッツ』(2001年刊。邦訳:鈴木仁子訳,白水社,2003年)の関係代名詞やら従属の接続詞が錯綜する,記憶のゆらぎやねじれをたどり直すような文体とは異なって,ずっとシンプルです。ドイツ語学科の2年生ならば,単語の意味が分かれば物語を追うことはできるでしょう。

 『世界をはかる』の面白さは,語り手の一筋縄ではいかないユーモアが生み出す独特の言語空間にあるように思います。特にフンボルトとガウスの対話は,対話ではありながら対話になっていない,対話になっていないようでも対話になっている不思議な空間を作り出しています。
 ぜひご自分でお楽しみください!

 日本語訳も発売されました。こちらで楽しむのもいいかな?


ダニエル・ケールマン『世界の測量〜ガウスとフンボルトの物語』瀬川祐司訳,三修社,2008年

 では,auf Wiedersehen!


NHK外国語講座 テレビでドイツ語
教育テレビ
放送:(木) 午前0:00~0:25(水曜深夜)
再放送:(翌週月) 午前6:00~6:25
大好評放映中です。

Gäthke ゼミ

HERZLICH WILLKOMMEN


1815年から現在までのドイツの歴史について、ドイツ語で学んでいます。ドイツという国は何百年もの間まとまったひとつの国を持っていませんでした。1815年には小国の集まりとしてドイツ連邦が発足します。その後、1871年ドイツ帝国の成立、1918年第一次世界大戦後の分割、ナチスによる強引な領土拡張、そして、1945年第二次世界大戦後の東西の分断など度々姿を変えてきました。

この時代の中から興味のあるテーマを自ら選び、調べ、発表して、最後にゼミ論という形でまとめ提出します。私たちが実際に選んだテーマを紹介します。

・War die Einheit positiv oder negativ?
・Vergleich der Politik von Bismarck und Wilhelm Ⅱ.

・Welche Ziele verfolgte der Wiener Kongress?

・Wie und warum konnte Hitler die Macht ergreifen?

・Warum war die Weimarer Verfassung zu liberal oder demokratisch?

・Warum nannte man Bismarck den „eisernen Kanzler“?



授業は先生が用意してくれたドイツ語の資料をもとにドイツ語で進められます。先生は明るくフランクですが、厳しい面もあり、ドイツ語の教材をただ読むだけでなく、自らの考えを持つまで理解するように言われます。すごく大変で自ら学ぼうとする姿勢が求められるので力がすごくつきます。

メンバーは大学に入ってからドイツ語をはじめて学んだ人や、ドイツ在住経験者までいろいろです。メンバーの大半が在学中に留学も経験しました。それぞれ個性は強いけどみんないい人ばかりです。わからないところはわかるまで徹底的に話し合う、そして互いに教え合います。

そんな、先生を筆頭に強烈パワーを持った学生が集まるゼミがゲートケゼミです。このゼミも私たちが最後のゼミ生になってしまいましたが、このゼミに入れて幸せでした。


Herr Gäthke!! Vielen Dank für Alles und bleiben Sie Gesund für immer.
また飲みに行きましょう♪

2008年5月2日金曜日

「テレビでドイツ語」よもやま話3

長〜い単語


 5月第1回の放送では,キーフレーズが
Ich möchte gerne zwei Eintrittskarten.
(入場券を2枚ください)
でした。

 Eintrittskartenという言葉,ドイツ語に慣れた人に はまったく難しくないですよね。それは,単語を分解して,<Eintritt + s + Karten>という要素に分けて考えられるからです。さらにドイツ語のできる人であれば,Eintrittも<ein... (中へ) + Tritt (入ること)>に分解できるでしょう。

 でもこの言葉は,はじめてドイツ語を学ぶ人にとっては信じられないくらい(?)長い言葉に思えるはずです。どこに区切りがあるのかもわからない言葉が,アルファベートで15文字,カタカナで書くと11文字もあるのですから。

 こうした長〜い単語は,ドイツ語の面白さの1つだと思います。私がドイツ語をはじめた頃に,「バス停」という単語,die Bushaltestelle [ブス・ハルテ・シュテレ]が出てきました。アルファベートで14文字,カタカナで9文字で,Eintrittskartenより短いですが,そのときはなんども繰り返して発音して,スラスラ言えるようになったときは,とても嬉しかったことを覚えています。

 ドイツ語の長い単語は,必ず分解することができますし,意味のまとまりごとに区切って発音しますので,語彙が増えるとともに意味を取ったり,発音したりするコツがつかめると思います。初心者の方はどうぞご安心ください。

 さて,ドイツ語でもっとも長い単語をご存じですか? 私の知っている限りでは,ネットで紹介されていたもので,
Donau-dampf-schiff-fahrts-gesellschafts-rad-dampfer-kapitäns-
kajüten-tür-sicherheits-schlüssel-etui
というものがあります。アルファベートでなんと87文字!

逐語的に訳すと,「ドナウ川・蒸気・船・航行・会社・(外)輪・蒸気船・船長・船室・ドア・安全・キー・ケース」で,少し日本語らしくすると,「ドナウ蒸気船会社の外輪蒸気船の船長の船室ドアの安全錠ケース」とでもなるでしょうか。

 もちろん言葉として無理があるにせよ,こうした言葉遊びができるくらいドイツ語は組み合わせによって言葉を作ることができるのです。

 そしてどんなに長い単語でも,最後の語で名詞の性が決まります。最後の言葉はdas Etuiですので,この単語の性は中性です。

 最後にクイズ。世界中でいちばん長い単語は何でしょうか? 答は下です。では,
auf Wiedersehen!(さようなら)




 答:英語のsmiles。なぜかって? sとsの間が1マイルあるから!


NHK外国語講座 テレビでドイツ語
教育テレビ
放送:(木) 午前0:00~0:25(水曜深夜)
再放送:(翌週月) 午前6:00~6:25
大好評放映中です。