2014年1月29日水曜日

『ドイツ映画祭2014』

『ドイツ映画祭2014

ヨハンナ比較文化研究所主催の『ドイツ映画祭2014』が、川崎市の後援を得て43日から517日まで計6日間、川崎市国際交流センターホールにて開催されます。今回は3本のドイツ映画(日本初上映)が上映されます(全て日本語字幕あり)。いずれの作品も現代史の重要事件を扱ったものです。

映画の概要は以下のとおりです。



『グライヴィッツ事件』1961年)

監督:ゲアハルト・クライン
脚本:ヴォルフガング・コールハッセ
モノクロ70



グライヴィッツ事件とは1939年、当時ドイツ領であったグリヴィツェ(現ポーランドでグライヴィッツはドイツ読み)にあるラジオ局に親衛隊がしかけた自作自演の襲撃事件。親衛隊はこれを反ドイツ系ポーランド住民の仕業に見せかけた。

当時、このグライヴィッツ襲撃事件以外にもポーランドとドイツの国境付近で複数の放火事件が起きており、すべてがポーランド侵攻に口実を与えるための「ヒムラー作戦」であった。事件の真相は、ニュルンベルク裁判でのSS少佐アルフレート・ナウヨックスの供述で明らかになっている。

この謀略事件をもとにヒトラーはポーランドに対する「自衛権行使」を主張し、ポーランド侵攻を発動して第二次世界大戦が始まる。
映画はナウヨックスの証言を忠実にドラマ化しながらも、途中に当時大女優であったマルタ・エゲルトの歌を挿入するなど、娯楽作品としても十分楽しめるように作られている。

 監督のゲアハルト・クラインは、10代の男女の引き起こす事故の顛末をモノクロながら美しい画面で描き出した『Berlin, Ecke Schönhauser(1957)の監督としても有名。また、脚本のヴォルフガング・コールハッセは名監督コンラート・ヴォルフの『Ich war neunzehn』をはじめ、数多くの優れた脚本を手がけるなど、多作である。





『赤いオーケストラ』2004年)
監督:シュテファン・ローロフ
カラー89





 ナチスに抵抗したドイツ最大のグループ『赤いオーケストラ』は、100人もの多様な男女の集合体だった。色々な気質と年齢、様々な政治傾向と学歴の者がいたが、全員が国家社会主義と戦争を終わらせるために結束し、その多くが拷問され処刑された。戦後は元SSの軍人が米国占領軍に取り入る手段として、「赤いオーケストラ」を東側のスパイ組織に仕立て上げた情報をCIAに提供。そのため今度は冷戦のなか、双方の宣伝材料にされ、彼らの名誉はなかなか回復されなかった。こうした背景による娯楽作品も創作され、赤いオーケストラがスパイ組織であったかのようなイメージ作りにひと役買ったようである。
 
 しかし最近、このグループについての再評価がさかんになされるようになった。今回紹介するローロフ監督の作品では、生存者や遺族に詳細なインタヴューを行ない、洗練されたアニメーションでレジスタンスの様子を再現することによって、組織の真の姿を今日に初めて蘇えらせる。監督は生還したピアニスト、ヘルムート・ローロフの息子。

"ヒトラーをどうにかしなくちゃならんという思いが日増しに強くなっていった..."
ヘルムート・ローロフ






『秋のライプツィヒ1989
1989年)
監督:アンドレアス・フォイクツ
モノクロ54




ベルリンの壁を崩壊に導いた大規模な「月曜デモ」を、ライプツィヒを中心に取材。デモ参加者、対峙した警官隊、市議、その他あらゆる場面でかかわった人物にインタヴューし、当事者としての旧東ドイツ市民が何を考え、どのように行動したかをカメラで追う。

1989年
10月 7日 GDR40周年記念日。ベルリン、ライプチヒ、マクデブルク、ドレスデン、カールマルクス市で反対デモ
10月 9日 ライプツィヒ市民30万人がデモ、非暴力を呼びかける
10月18日 ホーネッカー辞任。エゴン・クレンツ、書記長に
10月24日 クレンツ、国務院議長に
10月27日 無許可越境に関する第213条項廃止
11月 1日 クレンツ、ゴルバチョフを訪問
11月 4日 ベルリンで初の公認デモ、50万人が街頭に
11月 6日 旅行制限法案が国会で無効に。この年すでに25万人が国外へ
11月 7日 東ドイツ内閣辞職
11月 8日 共産党政治局選挙
11月 9日 突然国境が東西ドイツ全市民に開放される
11月13日 SED特別委員会召集、ハンス・モドロウが首相に選ばれる




料金:各回500円(自由席・264席)
予約はjohannastudies☆gmail.comまたは0467-81-5624まで。
※☆を@に変えてください。

上映スケジュール
4月3日()18:40より
赤いオーケストラ
4月4日()18:40より
グライヴィッツ事件
5月1日()18:40より
赤いオーケストラ
5月2日()18:40より
赤いオーケストラ
5月16()18:40より
赤いオーケストラ
5月17()14:00より
赤いオーケストラ
5月17()16:00より
秋のライプツィヒ
5月17()17:20より
グライヴィッツ事件

会場へのアクセス
川崎市国際交流センターホール 
(東急東横線・目黒線「元住吉駅」下車徒歩12)

『ドイツ映画祭2014HP

2014年1月27日月曜日

映画『コーヒーをめぐる冒険(Oh Boy)』


映画:『コーヒーをめぐる冒険』(原題:Oh Boy)


2012年/ドイツ/85分
ドイツ語/モノクロ
2014年春 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

あらすじ:
2年前に大学を辞めたことを父に秘密にしたまま、“考える”日々を送っている青年ニコ。恋人の家でコーヒーを飲みそこねた朝、車の免許が停止になった。アパートでは上階に住むオヤジに絡まれ、気分直しに親友マッツェと出かけることに。すると、クサい芝居の売れっ子俳優、ニコに片想いしていた同級生ユリカ、ナチス政権下を生き抜いた老人等々、ニコの行く先々でひとクセある人たちが次々と現れる。果たして、ニコのツイてない1日の幕切れは──? (公式HPより)





その他詳細はこちら:映画『コーヒーをめぐる冒険』公式HP



上映情報:

2014年3月1日(土)より

渋谷シアター・イメージフォーラム


【上映時間】

13:00/15:00/17:00/19:00

劇場HPはこちら




2014年1月23日木曜日

映画『さよなら、アドルフ(Lore)』



映画:『さよなら、アドルフ』(原題: Lore)
制作年:2012年
制作国:オーストラリア、ドイツ、イギリス合作

監督:ケイト・ショートランド
上映時間:109分
全編ドイツ語

あらすじ:
1945年春。敗戦後のドイツで、ナチ親衛隊の高官だった父と母が連合軍に拘束され置き去りにされた14歳の少女・ローレは、幼い妹・弟たちと遠く900キロ離れた祖母の家を目指す。終戦を境に何もかもが変わってしまった国内では、ナチの身内に対する目は冷たく、相手が子供であっても救いの手を差し伸べてくれる者はいなかった。そんな中、ナチがユダヤ人にしてきた残虐行為を初めて知り、戸惑うローレ。さらに、ローレたちを助けてくれるユダヤ人青年・トーマスが旅に加わったことで、ローレがこれまで信じてきた価値観やアイデンティティが揺らぎ始める—―(公式サイトより)



上映館情報
東京:シネスイッチ銀座 1/11〜
神奈川:シネマ・ジャック&ベティ 2/8〜2/28
千葉:千葉劇場 2/15〜2/28

※その他詳細は公式サイトをご覧ください。


原作:『暗闇のなかで』(レイチェル・シェーファー著、原題:The Dark Room)→獨協大学図書館OPAC
amazon.co.jpで確認する場合はこちら

映画『ハンナ・アーレント』追加上映しています!

昨年12月20日の記事で紹介した映画『ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)』(2012年)は、岩波ホールでの上映は終了(1月16日)しましたが、ユーロスペース他数か所の劇場にて、アンコール上映、追加上映となっています。

以下、各劇場の上映情報です。


ユーロスペース(渋谷)

【期間】 1月11日~1月31日

【上映時間】
13:30/18:40~20:50

【入場料金】
一般1700円/大学・専門学校生1400円/会員・シニア1200円/高校生800円/中学生以下500円

HPはこちら



新宿シネマカリテ

【期間】 1月18日~1月30日

【上映時間】
1月18日~24日:12:10~14:10/21:15~23:15(レイト)
1月25日~30日:12:15~14:20/21:00~23:00(レイト)

【入場料金】
一般1,800円/大学生・高校生1,500円(学生証をご提示下さい)/中学生(学生証提示)・小学生・幼児(3歳以上)1,000円/シニア(60歳以上)1,000円/障害者手帳をお持ちの方…1,000円(お付き添いの方1名様まで同料金)
※この他お得な割引・クーポンなどあり。(詳しくはHPまで)

HPはこちら



吉祥寺バウスシアター

【期間】 1月31日まで

【上映時間】
10:30 / 12:40 / 14:50

【入場料金】
一般1,800円/学生1,500円/高校生以下・シニア・会員1,000円

HPはこちら



角川シネマ有楽町

【期間】 1月25日~2月6日(アンコール上映)

【上映時間】
1月25日~1月30日:15:00
1月31日~2月6日:16:20

【入場料金】
一般1,800円/大学生・高校生1,500円/小学生・中学生・シニア(60歳以上)1,000円/幼児(3歳以上)900円

HPはこちら


※東京以外の劇場情報に関しては、公式HPをご参照ください。





また、『ハンナ・アーレント』の大ヒットを記念して、ユーロスペースでは、幻のアイヒマン裁判実録ドキュメンタリーが限定公開されています。

『スペシャリスト―自覚なき殺戮者―』


監督:エイアル・シヴァン
出演:アドルフ・アイヒマン
1999年/フランス・ドイツ・ベルギー・オーストリア・イスラエル
128分/モノクロ


【上映期間】 1月11日~1月31日

【上映時間】
16:00~18:20

【入場料金】 1,200円均一

【あらすじ】
95年にイスラエルのフィルム保管所で発見されたナチス戦犯アイヒマン裁判の全行程を記録した350時間にも及ぶ未公開テープを、ハンナ・アーレントの著作「イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告」を軸に編集したアイヒマン裁判の全貌。

『スペシャリスト―自覚なき殺戮者―』は法廷を舞台としたドラマであり、そこに描かれているのは法律と階層秩序にこの上もない敬意を払う熱心な官吏であり、また同時に数百万人の人々の抹殺に責任を負うSS幹部でもあり、且つ原題の犯罪者でもある一人の男の肖像である。

警察当局は被告を血に飢えた変質者、権謀術数にたけた嘘つき、そして連続殺人者として描写しているが、しかしこの男は物静かな家庭人のような容貌であり、その平凡さは滑稽であると共に恐ろしささえ感じさせる。この男は自分が加担した犯罪計画で自分の果たした役割を否定していないが、上司の指示、忠誠の制約あるいは命令遵守義務といった隠れ蓑の背後に隠れてしまう。この男は自分の役割が単に代行者でしかないこと、すなわち純粋に行政上・兵站上のものでしかなく、いかなる感情も持ち合わせていないということが人道的裁判から擁護されると考えている。もっともそれだからといってすべて免責になるというものではない。

被告アドルフ・アイヒマンは平均的な背丈の50代の男性、近眼で頭髪はほとんど禿げ上がっており、神経性の痙繁で悩んでいる。裁判の行われている間中、アイヒマンはガラス製のボックス席に座り、自分の回りにこぎれいに積み重ねられた書類に絶えずメモ書きをしたり、何度も読み返したりざっと目を通したりしている。国外移住のエキスパートであり「ユダヤ人問題」のスペシャリストであったアイヒマンは、1941年から1945年にかけて行われた「人種上の理由による国外追放者」をナチス強制収容所へ移送する責任者であって彼はこの仕事を驚くほどに官僚的な正確さで遂行する。法廷で、あるいは彼からあてがわれた義務と良心との間の葛藤をなんとかして表現しようとする。そしてその義務を怠ったという理由で誰も彼も告発することはできないと主張する。

自分自身の無力さに当惑したため、被告は自分自身を「大海の中の一滴、上級権力の手中にある道具」と表現する。もし私がやっていなかったら、誰か他の人間が代わりにやっていただろう、と述べている。犯罪の残忍な性質と被告の平凡さとの間のコントラストは極めて印象深いものであり、このドキュメンタリー作品を構成する13の場面が進むにつれてなお一層明らかなものとなる。なぜならそこに描かれているのは恐ろしく凡庸な人間の肖像だからである。
HPはこちら




『ハンナ・アーレント』を見逃した方、それから『ハンナ・アーレント』は観たけれど、『スペシャリスト』は観ていないという方、さらにどちらも観たけれどもう一度!という方は是非この機会に、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。