2007年12月21日金曜日

2007独協インターナショナル・フォーラム開催

 12月8 ~ 9日の2日間にわたり「日本とドイツにおける移民・難民・外国人労働者とその受入れ」をテーマとして掲げ、2007獨協インターナショナル・フォーラムが開催された。

本フォーラムのコーディネイターでもある本学外国語学部ドイツ語学科増谷英樹特任教授の基調講演のあと、第1セッションでは「歴史的経験とその継承」、第2セッションでは「国家の政策と社会的受容」、第3セッションでは「移民の受容と国民意識の問題」と題し、専門家によるアクチュアルで示唆に富んだ報告が行われ、それに続いて活発な質疑応答・討論が展開した。

今年で第20回を迎えた本フォーラムは、記念すべき年にふさわしく、一般市民の方々や学生はもちろん、大学、官庁、自治体、マスコミなど各方面から、2日間で延べ約300名と、これまでで最多の聴衆を集め、この問題に対する関心の高さを伺わせた。

増谷教授は今回のフォーラムを振り返り、「グローバル化が進む現代社会において、<人の移動>は、ますます重要な問題となり、また国家によるその統制のあり方も、複雑さを増しています。今回のフォーラムは、<移民・難民・外国人労働者>問題を考える上で、小さいながらひとつの確実なステップになったと思います」と語ってくれた。

 なお、パネリストの氏名と報告タイトルは以下の通り。

第1セッション>
ディートリヒ・トレーンハルト氏(ドイツ・ミュンスター大学教授):
「戦後ドイツにおける移民・流入民とその受入れ」、
杉原達氏(大阪大学教授):
「在日朝鮮人の歴史的形成・展開と日本の社会意識−大阪の場から考える」 

第2セッション>
カーリン・ヴァイス氏(ドイツ・ブランデンブルク州政府移民統合省オンブズマン):
「ブランデンブルク州における移住と統合政策」、
アンジェロ・イシ氏(武蔵大学准教授):
「在日(日系)ブラジル人の現在の動向と意識」、
青柳伊佐雄氏(草加市総合政策部人権共生課課長):
「草加市の外国籍市民施策について」、
簗瀬裕美子氏(草加市国際相談コーナー):
「『草加市国際相談コーナー』運営活動を通して見えたこと」 

第3セッション>
黒田多美子氏(本学教授):
「教科書のなかの移民・難民・外国人労働者−問題提起として」、
岡村圭子氏(本学専任講師):
「多文化共生社会における『国Kuni』と言葉」

2007年12月18日火曜日

古田ゼミ紹介

古田善文ゼミ「ウィーンの歴史と文化」

獨協大学外国語学部では、夏休みがあけ涼しくなってくる頃ぐらいから、二年生の間でつぎのような会話がよく聞こえてくるようになる。
「どこのゼミにするか決めた?」
「~先生のゼミにしようかなー。」などである。この学部では、三年次より始まる「専門演習」に向けて、まずは数あるゼミの中から一つを選ばなければならない。
この選択はもちろん人それそれであるが、定員が決まっているため、選抜の結果、希望したゼミに必ず入れるという保証はない。そのため、希望ゼミに入れるか否かは、獨協生のその後の大学生活の大きな分かれ道となる。

・・ではそもそもゼミとはどういった集まりで、どういった活動をするのだろうか?
広辞苑によれば、ゼミ=ゼミナールの略とある。この単語はアルファベットにするとSeminar、いわゆる英語のセミナーである。しかし、日本ではドイツ語読みでゼミナール。ドイツ語学科生には親しみやすい名前なのである。



そろそろ本題である古田ゼミの紹介に移りたいと思う。
まず主なテーマはズバリ「ウィーンの歴史と文化」。部門はⅢ類である。その内容について、ドイツ語学科の2007年度版「演習の手引き」から引用してみると、

「ゼミでは古くから多様な民族と文化が交錯するする街ウィーンを対象に、この魅力あふれる中欧の古都の歴史を検討します。ゼミが扱うのは、ウィーンが政治・社会・文化的な大変動を経験しながら近代都市への転換をはたした時期、つまりハプスブルク帝国の末期にあたる19世紀末から、1918年の第一共和国の誕生を経て、さらにオーストリアがヒトラー・ドイツに併合される1938年頃までの50年間を予定しています。」
とある。

それでは先輩方が具体的にどういったテーマと格闘しているか、本年秋学期の事例を具体的に見てみよう。

「コーヒーの歴史とベルリンのカフェ」
「ビーダーマイヤー時代」
「ウィーン市長 カール・ルエーガー」
「サウンドオブミュージック♪♪」
「ナチ体制化の青少年」
「オーストリア継承戦争と七年戦争」
「第二次世界大戦後・冷戦時代の『中欧』」
「夢判断」
「パレスチナ問題とユダヤ人」
「アドルフ・ヒトラー」
「環境先進国・ドイツ~京都議定書達成に向けて」
「ウィーンにおけるユダヤ人迫害の歴史」
「ヴァルトハイム問題」
「ウィーン会議について」
など多様である。

オーストリアやウィーンにちなんだテーマを正面から扱うゼミ生がやはり多いが、なかにはゼミの共通テーマとはかけ離れた題材を研究対象にする者も少なくない。ちなみに紹介者自身のゼミでの発表のテーマは「フーリガンから見るスポーツと暴力」であった。もちろんウィーンのウの字も出てこない。それは先生の守備範囲の広さもあるが、やはり先生が愛するサッカーを裏テーマとしていることも関係しよう(ちなみに先生は知る人ぞ知る、ドイツブンデスリーガのボルシア・ドルトムントの熱狂的サポーターなのだ!)。
こういった多様なテーマについて、ゼミ生は、先生をまじえて討論をしながら知識を蓄え、視点を磨くことになる。そういった活動が主に教室で、時には中央棟五階の古田善文研究室で、松原団地駅前の「わたみん家」で、青山のブラジル料理屋で、有楽町のガード下で、ついにはウィーンその地で(?)繰り広げられるのである。

もし、古田ゼミに興味を持ったのであれば、思い切って中央棟五階、古田善文研究室を訪ねてみるといいかもしれない。きっと先生は、あなたの熱意あふれる質問に、真摯に答えてくれるはずである。

文責:ゼミ生代表

2007年12月10日月曜日

『ドイツ文学者の蹉跌―ナチスの波にさらわれた教養人』




  本情報
  著者:関楠生
  出版社:中央公論新社
  発行年月:2007年8月
  サイズ:単行本
  ページ数:277ページ
  ISBN:978-4-12-003858-7










目次

序章  ファシズム下の日本とドイツ文学研究
第1章 高橋健二とナチズム―ナチス政権獲得から大政翼賛会文化部長まで
第2章 ヘッセとナチス文学は両立するか
      ―高橋健二と秋山六郎兵衛と石中象治の場合
第3章 「ドイツ文学史」の陥穽―ヘッセとマンとナチス文学
終章  同時代ドイツの文学史を検索する


内容紹介

誤認・省略・改変。それは時局への迎合か? 空虚な高揚か?
ナチス・ドイツとの日独友好関係の下、高橋健二、秋山六郎兵衛、石中象治、鼓常良らのドイツ文学者の足跡を検証する。ヘルマン・ヘッセ、トーマス・マン、ハイネへの高い評価が時勢の変化に流され、ついにはドイツ文学の価値観を塗り替えてしまうに至るプロセスを、当時の資料を用いて調査、もう一つの戦争責任を問う。


著者紹介

1924年静岡生まれ、東京大学文学部独文学科卒業。同大学名誉教授、獨協大学名誉教授。

興味のある方は全国書店で、またamazonなどオンラインショップでも扱っています。

2007年12月2日日曜日

工藤達也ゼミ紹介

 まずゼミ室に入ると、まるでそこは寂れた酒場にある一軒の飲み屋に似た「しぶい」雰囲気が漂う。毎週ゼミの時間になると、決して多くはない数のゼミ生たちが常連客のようにぽつりぽつりと座っている。ゼミのテーマが批評理論というせいだけあってか、アカデミックな影が、秋ともなると、さらに色濃くゼミ室にさす・・・。うーん、やはり「しぶい」。


  しかし、最近は、意外と注文に哲学・思想の発表が多いのはなぜだろう—。いや、これまじで疑問。これは発表者も、聞く方も教師も難儀するものだが、学問の精髄を探ろうという期待と傾向が強いのはよしとして、これは21世紀の珍現象ではなかろうか?・・・考えてしまう。 

 さて今日はというと、「カントの批判理論について、やりまーすっ」、という発表者の屈託ない声。うっ、こいつは手強い発表になりそうだ・・・。レジュメが配られ、発表が一通り終わる。そして、沈黙がゼミ室を支配する。

  「われわれは知識を共有できたであろうか?」と疑問を持つこの瞬間の沈黙—、これが私は一番こわい。そこで教師は学生を時には挑発し、そして発表者と互いに模索しながらたどたどしく説明を開始する。教師の額から汗が流れ、つばが飛び、チョークが折れる。そして終業のチャイムが鳴るころには、すでに喉がからから、疲労困憊だ。そして、最後に一言「来週の発表は誰?」。「私でーす、アドルノについてやりまーすっ」、ひーっ。次はアドルノっすかぁ、こりゃまた手強い・・・。

  まあこんなのが、ある日のゼミの一光景ですが、要はゼミでは原則、毎週常連(=学生)の皆さんの自由な発表に工藤がコメントを加える形態をとっています。哲学・思想関係だけではなく、前はウイリアム・モリスとその影響(アール・ヌヴォー、ユーゲント・シュティールなど)を調べてもらったこともあったし、『戦艦ポチョムキン』などの古典的映画を鑑賞したこともあった。建築でも写真でも興味があったら、まぁ敷居は高くないから気楽にゼミをのぞきにいらっしゃい。そりゃもう難しい話題も簡単な話題も歓迎しますよ。学生=常連さんといっても毎回は参加しないのもいて困ったものですが、しかしまあ、そんな「いやみ」はぬきにして、とにかく新歓コンパは明るいお好み焼き屋さん(予定)で、みんな盛り上がりましょう!

 


ちなみに写真は上がカント、下がアドルノ。ねっ、やっぱ「しぶい」でしょ。