2010年5月21日金曜日

ドイツのコメディ映画~"Der Schuh des Manitu"~

ドイツ映画は世界大戦が舞台の映画やヒューマン・ドラマが多いと思われることも少なくないようですが、今回ご紹介するのはドイツの西部劇コメディ映画 "Der Schuh des Manitu" (独題:マニトの靴 邦題:荒野のマニト)です。
ドイツで2001年に公開されたこの映画は当時、ドイツ映画史上最高の興行成績約80億円を記録、初日動員数歴代第1位を樹立し、 公開中に約1,200万人の観客を動員し大ヒットした作品です。
しかし日本では短期間の単館上映でしたので、見に行く機会を逃した方も多いと思います。日本のコメディとはまた一味違うドイツ風コメディを、監督・製作・脚本・主演+もう一役をこなしたミヒャエル・ブリー・ヘルビヒがこの映画に詰め込みました。 ドイツ語のDialekt(方言:この映画ではバイエルン地方の方言が飛び交っています)や言葉遊びやWitz(冗談・しゃれ・ジョーク)を楽しんでみましょう。

あらすじ:  カウボーイのレインジャーと“血の兄弟”の契りを交わしたアパッチ族の酋長アバハチは、ショショーニ族から金を借り、不動産業者のサンタ・マリアから一族の憩いの場にと酒場を購入する。しかしサンタ・マリアの正体は実は詐欺師で、手に入れたはずの酒場も“偽物”。騙されたアバハチは銃撃戦の末、結局サンタ・マリアに金を持ち逃げされてしまう。ショショーニ族に借金を返済するためにアバハチとレインジャーは、アバハチの祖父が遺した宝“マニトの靴”を探しに行くが…。 その過程で加わる一癖も二癖もある仲間達の活躍も必見!

?ドイツなのになぜ西部劇?

ドイツ人がなぜウエスタン・カントリーのコメディ映画を作るのだろうと思われるかもしれません。

しかしドイツの人たちにとって西部劇の冒険譚は実は身近なものなのです。
それは カール・マイ(Karl Friedrich May, 1842-1912)というドイツの小説家がアメリカ西部を舞台にネイティブ・アメリカンを主人公とした多くの冒険小説を発表し、人気を博したからです。 『ヴィネトゥの冒険 -アパッチの若き勇者』(原題: "Winnetou"1893)をはじめ、カール・マイが書いた作品の多くは今日にいたるまでドイツ青少年の愛読書となり、多数映画化もされています。
たとえば『ヴィネトゥの冒険』の内容は
“アメリカ西部を舞台に、アパッチ族の若き酋長ヴィネトゥと、ドイツから渡ってきた勇敢な青年技師シャッターハンドが互いに義兄弟として結ばれ、正義の実現のために邁進し、悪漢ザンターに立ち向かうシリアスな冒険小説”――そう、今回ご紹介した"Der Schuh des Manitu" は、このカール・マイの小説から多くのヒントを得たもので、ドイツ国民にとってはすでに馴染みの設定なのです。
カール・マイの作品を読んでから"Der Schuh des Manitu"を観ると、劇中のところどころにマイの作品のパロディが見られるので面白さも倍増のはず。"Der Schuh des Manitu" には写真のマイにそっくりの飲んだくれおじさんも登場しますが、果たしてそれは…?


『ヴィネトゥの冒険』をはじめカール・マイの作品は本学図書館にも置いてあります。
ドイツ発、ウェスタン・ロマンの世界へようこそ・・・!


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