2007年7月20日金曜日

渡部ゼミ

 渡部ゼミのテーマは「魔女」です。ヨーロッパで、中世から近世にかけて広く行われた魔女狩り・魔女裁判は、人間の奥底に潜む残酷性のよく現れた現象だと言えます。それだけにこのテーマに関する文献は数多くあり、研究者はさまざまな視点からこの現象の分析を行っています。
 春学期はゼミ生が6つの小グループに分かれて、グループごとに1つの文献を担当し、その内容を6つのポイントに沿って要約・発表することを中心に進行しました。そして最終回には、上記6つのポイントについて、各文献における記述の違いを比較検討しました。
 例えば、なぜ魔女狩りが起きたのか、つまり、魔女狩りの起源についても、文献によって記述がかなり異なっていました。ある文献では、魔女狩りは教会が自らの権威を保つために起こした現象である、という見解が示されている一方で、他の文献では、それは民衆の間にもともとあった魔女に関する噂・信仰から発展したものである、と書かれています。
 このように、いろいろな見解を比較・検討しながら、歴史上の魔女狩り・魔女裁判について批判的に検証するのが、春学期のゼミの内容でした。

       (ハルツ地方シールケの町で買った魔女の人形です!)

 秋学期は、春学期に得た知識をもとにして、1)グリム童話と「魔女」―グリム童話に出てくる「魔女」、あるいは、グリム童話書き換えの過程で「魔女」化していく女性登場人物について―、2)文学作品化、あるいは映像化された「魔女」―例えば、シェークスピアの『マクベス』などを始めとして、古今東西の文学作品、映画などに登場する「魔女」のイメージ分析などをしてみる、3)ドイツの、いわゆる「魔女街道」にまつわるさまざまな伝説などを収集、分析、比較検討してみる、などといった方向へ展開して行く予定です。
 テーマは残酷で暗いものではありますが、ゼミはさながら「ファミリー」のように明るく、和気あいあいとしています。各グループによる発表の後には質疑応答の時間もあり、さまざまな個性的な意見が飛び交いました。みなが互いの意見を尊重し、ゼミ自体はとてもいい雰囲気です。

春学期にゼミで取り扱った文献:
①森島恒雄『魔女狩り』岩波書店(岩波新書)、②浜林正夫、井上正美『魔女狩り』教育社(教育社歴史新書)、③ジャン-ミシェル・サルマン(池上俊一監修、富樫瓔子訳)『魔女狩り』創元社(「知の再発見」双書)、④ジェフリ・スカール、ジョン・カロウ(小泉徹訳)『魔女狩り』岩波書店(ヨーロッパ史入門)、⑤牟田和男『魔女裁判 魔術と民衆のドイツ史』吉川弘文館(歴史文化ライブラリー)、⑥イングリット・アーレント=シュルテ(野口芳子、小山真理子訳)『魔女にされた女性たち 近世初期ドイツにおける魔女裁判』勁草書房


  (ゼミ生の大久保君が書いてくれた原稿に、渡部が若干加筆しました)

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