2010年3月27日土曜日

拝復・・・

タニッキーをありがとうございました。
ブログを見た他の先生にも、芯が強そうなところがぴったりだと言っていただきました。 心から感謝します。

さて、卒業後も映画情報など気づいたことを投稿したり、現在原稿待ちしている記事のアップをさせていただくとして、今回は、論文執筆後に「ちょっと文化的な生活をしよう!」と思い、読んだ本の中から気に入ったものを一つご紹介させていただきます。

『ヒトラーの防具(Fu"hrers Ru"stung)』 (上・下巻) 
帚木蓬生 (新潮文庫 1999年)

東西の壁が崩壊したベルリンで、「贈ヒトラー閣下」と書かれた日本の剣道の防具が発見されました。そこから物語の舞台は一気に第二次世界大戦直前のドイツへと移ります。 ヒトラーの49歳の誕生日に剣道の防具一式を贈呈しようとやってきた日本団とその通訳者で日独混血の青年、香田光彦。彼が見た当時のドイツが描かれていきます。

ヒトラーに陶酔する上司と、そこからの情報を元に、変わっていくドイツの本当の姿を捉えきれないまま軍事同盟へと突き進んでいく日本。その中で光彦青年は、同じくドイツで医者として精神病院に勤める兄・雅彦から<集中治療病院>送りになる患者たちの実態を聞かされることによって、またユダヤ人女性・ヒルデとの自身の恋愛を通して、さらには実際にヒトラーの言動を目の当たりにすることによって、自分の軍人としての、または日独両方の血を持つものとしての、もっと根本的には人間としてのあり方を見つめることになります。

個人的に心に残ったのは、兄・雅彦の次の台詞です。
「戦争をする人間の底にあるのは偏見と差別です。自分たちの民族と集団が他のそれよりも優れていると思うところに、戦争の芽が生じます。そして戦争になれば、その芽がぐんぐん伸び、青空を覆いつくすまでにはびこってしまうのです」

「戦争」の文字を別のものに置き換えてみたら・・・。これは、私たちの日常のどの場面にも通じることだろうと思いました。そういった意味でもとても読み応えのある一冊でした。

0 件のコメント: